「東アジア共通の権利侵害責任法模範法」の構想と展開 |
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2010/8/20 12:20:00 |
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「東アジア共通の権利侵害責任法模範法」の構想と展開 「東アジア共通の権利侵害責任法模範法国際シンポジウム」準備グループ
現代工業社会の進歩により権利侵害責任法の社会基礎が変わった。科学技術の急速な発展に従い、東アジア各法域において相次いでリスク社会の時代に入り、社会のメンバーが危険を蒙るリスクが迅速に増大した。従って、安全への要求及び社会安定への需要が各国の権利侵害責任法の持続可能な発展を実現するための共通の原動力及び社会の基礎になった。それと同時に、現代の工業社会の発展に伴い、グローバル化及び地域化の成り行きが現れ、各国及び各地域が政治、経済、法律などの多次元、多分野において、お互いの繋がり、影響、制約を強化し続けている。この成り行きとしては、権利侵害責任法の分野における地域権利侵害責任法の協調及び統合である。 権利侵害責任法の一体化の過程において、その「模範法」は強制力ではなく法律の模範力に頼るという特徴によって広く運用され、また巨大な影響力を示した。 東アジア各国の経済往来が引き続き深化することにつれ、東アジア権利侵害責任法の統合という成り行きがすでに現れた。中国の「権利侵害責任法」は2009年末公布され、2010年7月1日より実施された。東アジア各法域の権利侵害責任法がほぼ完備されたことより、「東アジア共通の権利侵害責任法模範法」を制定する前提条件となった。 権利侵害責任法の統合過程において、欧米はすでに先頭に立ったいた。ヨーロッパ共通民法典の重要な部分として、ヨーロッパ共通の権利侵害責任法の起草作業には二つの成果が実現した。コッィオル(Koziol)教授の指導の元、ヨーロッパ不法行為法グループ(EGTL)は1996年より『共通の不法行為法』全10巻の叢書シリーズを引き続き出版し、EUにおける不法行為法の比較法研究及び資料の全面英語化を実現した。さらに2005年『ヨーロッパ不法行為法原則:テキストと評注』が出版された。フォン?バール(Von Bar)教授の指導の元、欧州民法典研究グループ(SGECC)は『ヨーロッパ不法行為法比較』という著書を踏まえ、2006年「相手に損害を与えた非契約責任」を公布し、そして2009年政府よりの評注も出版された。ヨーロッパにおける将来共通の不法行為法はできるだけ各国の不法行為法から「共通因数」を取り出し、各国に受け入れやすい共通の枠組みを創立することを目指している。米国の不法行為法法の統合過程には、主に米国法曹協会(ALI)と統一州法委員全米会議(NCCUSL)より推進されてきた。米国法曹協会は「リステイトメント」の方法で、20世紀20年代より、『不法行為法のリステイトメント』(1923-1939)、『第二次不法行為法のリステイトメント』(1955-1979)を相次いで公布し、現在の『第三次不法行為法のリステイトメント』にはすでに「製造物責任編」(1998)、「責任分担編」(2000)と「財産的及び精神的損害責任編」(2009)の起草作業を完成し、各州裁判所と連邦裁判所の不法行為法判例を統合した。統一州法委員全米会議は様々な「共通法」や「模範法」の制定を通じて、制定法上の不法行為法の統合を提唱した。すでに作成された『共同不法行為責任の分担法案』(1939、1955)、『共同比較過失法案』(1979)、『懲罰性賠償金の模範法』(1996)と『共同不法行為責任の分担法案』(2003)などは、すでに多数の州立法機関に受け入れた。 「東アジア共通の権利侵害責任法模範法」の目標とは、東アジアの経済一体化及び私法共同化を推し進め、そして将来ヨーロッパ共通の不法行為法、米国不法行為法のリステイトメントの法系を超えた統合を目指し、「国際権利侵害責任法模範法」を制定し、対話の土台を提供することである。最終的に提出された「東アジア共通の権利侵害責任法模範法」の各アーティクルにはモデルアーティクル、解釈、各法域の関連立法、模範事例及び評論などの内容を含め、中国語、日本語、韓国語及び英語で出版することになる。「東アジア共通の権利侵害責任法模範法」の起草により、東アジア地域の中国、日本、韓国及び台湾地域、香港特別区、マカオ特別区の各法域の権利侵害責任法学者の学術資源を統合し、全面的に研究を行い、最終仕上げとして「東アジア共通の権利侵害責任法模範法」の公式テキストを作り出す。本プロジェクトには主に下記の内容が含まれる。 第一、東アジア権利侵害責任法が東アジア法律文化の基礎、東アジア経済グローバル化の社会基礎及び共通の権利侵害責任法の倫理基礎を深く追求すること。 第二、東アジア諸国の権利侵害責任法の相違について、各法域における比較法研究を行い、東アジアの特色のある権利侵害責任法比較研究理論システムを作り上げること。 第三、典型的な訴訟事例を設計し、各法域の専門家より当法域の権利侵害責任法に「模擬判決」を作り出すこと。その分析結果を通じて、東アジア各法域の権利侵害責任法がどの程度の共通原則と規則が存在しているのか、また東アジア権利侵害責任法の統合の可能性及び必要性を検討する。 「東アジア共通の権利侵害責任法模範法」研究プロジェクトは5年間で完成する見込みである。当課題の研究期間中、毎年少なくとも一回の国際シンポジウムを開き、具体的な計画は下記の通りである。 2010年:中国人民大学民商事法律科学研究センターは権利侵害責任法研究所を設立し、日本、韓国、シンガポールなどの国及び我が国の台湾地域、香港特別区、マカオ特別区のプロジェクト協力機関と連絡する。また関係プロジェクトの協力機関にも相応のプロジェクトグループを設立し、将来の国際協力事項はそれを通じて展開する。2010年7月中国黒龍江で第一回「東アジア共通の権利侵害責任法模範法国際シンポジウム」を開き、関係の国際協力子項目の計画と執行を担当する。 2011年:第一回国際シンポジウムの分業により、各プロジェクトグループが各国の判例を収集し、翻訳と比較法の研究を行う。2011年第二回の国際シンポジウムを開き、メインテーマは各国の権利侵害責任法の共通点及び特有の制度、各国の重要判例の比較法での「模擬判決」により、東アジア共通の権利侵害責任法の問題点を追及する。 2012年:各プロジェクトグループの主要任務は「東アジア共通の権利侵害責任法模範法」の基本的な枠組みを作り上げ、「模範法」の基本構造及び内包を確定し、2012年の国際シンポジウムに提出することである。2012年に「東アジア共通の権利侵害責任法模範法の基本原則と枠組み」が採択できるように努める。 2013年:各プロジェクトグループの主要任務は「東アジア共通の権利侵害責任法模範法の原則」に基づき、「東アジア共通の権利侵害責任法模範法」(草案)を起草し、そして2013年の国際シンポジウムに提出すること。草案が中国語、日本語、韓国語と英語に訳して出版し、全世界に向けて学者の意見を求める。 2014年:各プロジェクトグループの主要任務は「東アジア共通の権利侵害責任法模範法」(草案)に基づき、国際交流及び検討を行い、そして「模擬判決」の方法で将来「東アジア共通の権利侵害責任法模範法」の実際の法律効果を確定するよう努める。2014年末の国際シンポジウムは「東アジア共通の権利侵害責任法模範法」の採択に努め、若干の「模擬判決」を付け加え、また中国語、日本語、韓国語及び英語で出版し、各プロジェクトグループよりそれぞれの立法機関に受け入れを求める。 上記で描かれたのは「東アジア共通の権利侵害責任法模範法」に関する構想と展開であり、2010年の東アジア共通の権利侵害責任法模範法国際シンポジウムで提出し、その審議を経て改正することになる。その上公式テキストを公表し、また当プロジェクトグループより協力?執行することになる。
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