「東アジア不法行為法モデル法」の構想と展開(意見募集) |
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2010/8/16 12:09:00 |
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現代工業社会の進歩により不法行為法の社会基礎が変わった。科学技術の急速な発展に従い、東アジア各法域において相次いでリスク社会の時代に入り、社会のメンバーが危険を蒙るリスクが急速に増大した。従って、安全への要求及び社会安定への需要が各国の不法行為法の持続可能な発展を実現するための共通の原動力及び社会の基礎になった。それと同時に、現代の工業社会の発展に伴い、グローバル化及び地域化の趨勢が現れ、各国及び各地域が政治、経済、法律などの多次元、多分野において、お互いの繋がり、影響、制約を強化し続けている。この趨勢としては、不法行為法の分野における地域不法行為法の協調及び統合である。不法行為法の一体化の過程において、その「モデル法」は強制力ではなく法律の模範力に頼るという特徴によって広く運用され、また巨大な影響力を示した。そして、東アジア各国の経済往来が引き続き深化することにつれ、東アジア不法行為法の統合の趨勢がすでに現れた。中国の「不法行為法」は2009年末公布され、2010年7月1日より実施された。そして東アジア各法域の不法行為法がほぼ完備されたことより、「東アジア不法行為法モデル法」の制定の前提条件を提供した。
不法行為法の統合過程において、欧米はすでに先頭に立ったいた。ヨーロッパ共通民法典の重要な部分として、ヨーロッパ共通の不法行為法(不法行為法)の起草作業には二つの成果が実現した。コッィオル(Koziol)教授の指導の元、ヨーロッパ不法行為法グループ(EGTL)は1996年より『共通の不法行為法』全10巻の叢書シリーズを引き続き出版し、EUにおける不法行為法の比較法研究及び資料の全面英語化を実現した。さらに2005年『ヨーロッパ不法行為法原則:テキストと評注』が出版された。フォン?バール(Von Bar)教授の指導の元、欧州民法典研究グループ(SGECC)は『ヨーロッパ不法行為法比較』という著書を踏まえ、2006年「相手に損害を与えた非契約責任」を公布し、そして2009年政府よりの評注も出版された。ヨーロッパにおける将来共通の不法行為法はできるだけ各国の不法行為法から「共通因数」を取り出し、各国に受け入れやすい共通の枠組みを創立することを目指している。米国の不法行為法法の統合過程には、主に米国法曹協会(ALI)と統一州法委員全米会議(NCCUSL)より推進されてきた。米国法曹協会は「リステイトメント」の方法で、20世紀20年代より、『不法行為法のリステイトメント』(1923-1939)、『不法行為法のリステイトメント?第二次』(1955-1979)を相次いで公布し、現在の『不法行為法のリステイトメント?第三次』にはすでに「製造物責任編」(1998)、「責任分担編」(2000)と「財産的及び精神的損害責任編」(2009)の起草作業を完成し、各州裁判所と連邦裁判所の不法行為法判例を統合した。統一州法委員全米会議は様々な「共通法」や「モデル法」の制定を通じて、制定法上の不法行為法の統合を提唱した。すでに作成された『共同不法行為責任の分担法案』(1939、1955)、『共同比較過失法案』(1979)、『懲罰性賠償金のモデル法』(1996)と『共同不法行為責任の分担法案』(2003)などは、すでに多数の州立法機関に受け入れた。 21世紀はアジア人の世紀である。東アジア不法行為法の統一は、アジア連理侵害法統一の前提及び基礎である。2009年12月24日、中国人民大学民商事法律科学研究センターは不法行為法研究所(www.chinesetortlaw.com)を設立し、日本、韓国及び台湾地域、香港特別区、マカオ特別区のプロジェクト協力機関と連絡し、「東アジア不法行為法学会」の設立に着手した。2010年7月中国黒龍江伊春市で「東アジア不法行為法モデル法国際シンポジウム及び東アジア不法行為法学会第一回年会」を開いた。中国大陸、日本、韓国、台湾地域、香港特別区より20人余りの不法行為法学者は、「伊春宣言」を共に発表し、「東アジア不法行為法モデル法」の起草機構として、「東アジア不法行為法学会」(AETL)を設立した。
「東アジア不法行為法モデル法」の策定目標とは、東アジアの経済一体化及び私法共同化を推進し、そして将来ヨーロッパ共通の不法行為法、米国不法行為法のリステイトメントの法系を超えた統合を目指し、「国際不法行為法モデル法」を制定し、対話の土台を提供することである。最終的に提出された「東アジア不法行為法モデル法」の各アーティクルにはモデルアーティクル、解釈、各法域の関連立法、モデル事例及び評論などの内容を含め、中国語、日本語、韓国語及び英語で出版することになる。「東アジア不法行為法モデル法」の起草により、東アジア地域の中国、日本、韓国及び台湾地域、香港特別区、マカオ特別区の各法域の不法行為法学者の学術資源を統合し、全面的に研究を行い、最終仕上げとして「東アジア不法行為法モデル法」の公式テキストを作り出す。本プロジェクトには主に下記の内容が含まれる。
第一、東アジア不法行為法が東アジア法律文化の基礎、東アジア経済グローバル化の社会基礎及び共通の不法行為法の倫理基礎を深く追求すること。 第二、東アジア諸国の不法行為法の相違について、各法域における比較法研究を行い、東アジアの特色のある不法行為法比較研究理論システムを作り上げること。 第三、典型的な訴訟事例を設計し、各法域の専門家より当法域の不法行為法に「模擬裁判」を作り出すこと。その分析結果を通じて、東アジア各法域の不法行為法がどの程度の共通原則と規則が存在しているのか、また東アジア不法行為法の統合の可能性及び必要性を検討する。
「東アジア不法行為法モデル法」起草プロジェクトの研究期間は5年間である。具体的な計画は下記の通りである。 2010年:各法域の理事長は第一回年回で採択された規約により、各法域で東アジア不法行為法学会分委員会を設立し、より多くの「東アジア不法行為法モデル法」を研究する不法行為法学者及び司法実務に携わる人を本学会に招く。また第一回年回で確定された研究課題に基づき、各法域の学者を推薦し、専門委員会の研究に参加させる。秘書処は学会の公式ウェブサイトwww.aetl.orgを充実し、各法域の理事長は下級委員会のサイトを充実させるように努め、その資源を共に有する。 2011年:各法域の理事長は2011年3月末まで、関係の研究課題の報告書を整理し、秘書処に提出する。2011年7月第二回年会を開き、メインテーマは各法域の不法行為法の共通点及び重要判例である。「東アジア不法行為法モデル法」の基本的な枠組み及び比較法研究の「模擬裁判」を定める。 2012年:各法域の理事長は2012年3月末まで、各法域の学者よりの判例に対する「模擬裁判」を整理し、秘書処に提出する。2012年7月第三回年会を開き、「東アジア不法行為法モデル法原則」を採択するように努め、「東アジア不法行為法モデル法」(草案)起草の仕事分担を確定する。 2013年:各法域の理事長は2013年3月末まで、下級委員会で「東アジア不法行為法モデル法原則」を検討し、仕事分担により「東アジア不法行為法モデル法」(草案)の関係部分を起草し、秘書処へ提出する。2013年7月第四回年会を開き、「東アジア不法行為法モデル法」(草案)を審議し、採択する。「草案」が中国語、日本語、韓国語及び英語に訳し、全世界の学者の意見を求める。 2014年:各法域理事長は各下級委員会で「東アジア不法行為モデル法」(草案)について検討を行い、2014年3月末まで改正意見を秘書処へ提出する。2014年7月第五回年会を開き、「東アジア不法行為法モデル法」を審議し、採択する。「模擬裁判」の方法で「東アジア不法行為法モデル法」の実際の法律目的効果を定める。その会議後、「『東アジア不法行為法モデル法』モデル法判例付け」を中国語、日本語、韓国語及び英語で出版し、各下級委員会よりそれぞれの立法機関に受け入れを求める。
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