東アジア不法行為法モデル法(草案)
(第三稿 · 2015年1月4日)
目 次
序 言
第一章 立法主旨と保護範囲
第二章 不法行為責任の帰属原因と責任分担方式
第三章 損害
第四章 因果関係
第五章 故意及び過失
第六章 抗弁事由と消滅時効
第一節 抗弁事由
第二節 消滅時効
第七章 損害救済方式と責任保険
第一節 損害の一般的救済方式
第二節 損害賠償の一般的規定
第三節 人身損害賠償
第四節 財産損害賠償
第五節 精神損害賠償
第六節 責任保険
第八章 複数加害者不法行為と責任
第一節 共同不法行為
第二節 分割責任と連帯責任
第三節 その他の複数加害者不法行為と責任
第九章 製品責任
第十章 環境汚染責任
第十一章 ネットサービスプロバイダ不法行為責任
序 言
不法行為法は、即ち私法上の権益保護法であり、亦不法行為責任の規制法でもある。私法上の権益保護は、私法の根本を固める。不法行為責任への規制は、民事主体の自由の基盤を築く。東アジア地域は太平洋西岸にあり、世界で一番人口の密集する地域の一つであり、また世界経済発展の最も迅速する地域の一つである。東アジア共同市場を形成するのは、世界範囲で社会進歩と経済発展に重要意義を持っている。引き続き東アジア地域の社会発展と経済繁栄を推進するため、市場参与者の私法上の権益を切実に保護し、また民事主体の行為自由を守らなければならない。東アジア各法域における不法行為法の規範は異なっていることによって、資金の累積、人材の流通、社会交流及び私法権益の保護などの面に制限及び妨害をもたらし、東アジア共同市場の発展に不利な影響を与える可能性がある。
東アジア不法行為法学会は、東アジア各法域及びアジアのその他の法域における不法行為法学者と司法実務に携わる人を団結し、東アジア各法域における不法行為法の立法、司法及び理論を研究し、不法行為法の発展を推し進めることを旨として、皆の力を集め、数年間の努力を経て、本モデル法を作り出した。東アジア各法域における不法行為法の統一を促進するため、モデルを作り出し、アジア不法行為法の統一の先駆として、世界不法行為法の統一化の流れに乗った。
本法の性質はモデル法であり、東アジア不法行為法学会より東アジア各法域における不法行為法の統一のために提出された構想と要旨である。その性質から言えば、東アジア地域における私法分野のソフトローであり、法律上の効力はない。しかし、モデル法の起草者が本法に対して、下記の役割を期待している。
(一)本法を通じて、東アジア各法域における不法行為法の立法に影響を与え、各法域における不法行為法を制定する又は訂正する時、本法の規範を参考として、その手本又は資料となれる。
(二)東アジア各法域の民事主体の間で不法行為の争議が起こった時、本法の規範を選んで、法律の根拠とする
(三)各法域の裁判官が不法行為責任の紛争事件を審理するとき、本法の規範を学理の根拠とする。
(四)本法は不法行為学者の研究対象として、世界各国における不法行為法の研究と教学に資料を提供する。
本法は構造上で下記の二つの部分に分ける。
(一)第一部分には一般不法行為責任、つまり第一章から第七章まで、不法行為法の立法主旨、保護範囲、帰責原則、不法行為分担方式、構成要件、抗弁事由、損害救済方式、責任保険及び複数加害者の不法行為と責任を規定した。
(二)第二部分には東アジア地域の不法行為法の中で共通価値のある特殊的な不法行為の三つの類型を選択的に規定した。(1)東アジア地域における製品の流通、消費者権益の保護、製品責任規則の統合を促進するため、「製品責任」を制定した。(2)個人が安全、健康、生態衡平の環境で生活する権利の保護、環境改善への促進、また汚染で損害を被った被害者の権益の保障のため、「環境汚染責任」の一章を制定した。(3)東アジア情報一体化を促進し、ネット上の自由を保護し、ネットサービスを規範し、ネットユーザの私法権益を保護するため、「プロバイター不法行為責任」の一章を制定した。その他の具体的な特殊な不法行為の類型について、本法では規定しない。
本法の起草者は、本法の制定、伝播を通じて、東アジア地域における不法行為法の理論研究と司法実務の進歩を推進し、世界不法行為法の分野で積極的な影響が生じることを期待している。
第一章 立法主旨と保護範囲
第一条 【立法主旨】
東アジア法域において、不法行為法の規則を統合し、不法行為の責任分担を規範し、民事主体の行為自由と私法権益を保護し、また東アジアにおける地域法制の協調と進歩を促進するため、本モデル法を制定する。
第二条 【不法行為法の保護範囲】
本法では不法行為責任の私法手段を通じて、民事主体の下記の私法権益を保護する。
(一)私法権利;
(二)純粋経済利益及びその他の私法利益が、本法に従って保護すべきである;
(三)環境公益等の法益が、本法には明文の規定があり、保護すべきである。
第二章 不法行為責任の帰責原因及び責任分担方式
第三条 【過失責任】
故意又は過失によって他人の私法権益を侵害し、損害が起こった場合、不法行為責任を負わなければならない。ただ、債権又は氏名権を侵害した時、故意がなければならない。
故意によって他人の純粋経済利益、又はその他の私法利益を侵害し、損失を与えた場合、不法行為責任を負わなければならない。
過失によって他人の前項で規定された私法利益を侵害し、重大な損害を与えた場合、不法行為責任を負わなければならない。
第四条 【過失推定】
他人の私法権益を侵害し、損害を与えた場合、法律の規定によって、加害者の過失が推定される場合、被害者は加害者の過失に立証責任が課されないが、加害者は自分の無過失に立証責任が課される。加害者が自分の無過失を証明できる場合、不法行為責任を負わない。さもなくば、不法行為責任を負わなければならない。
第五条 【無過失責任】
他人の私法権益を侵害し、損害を与えた時、加害者の過失の有無に関わらず、不法行為責任を負わせると法律で規定された場合、加害者が不法行為責任を負わなければならない。
法律には危険、欠陥又はその他の非難できる事由について、本条前項での不法行為責任を規定することができる。
無過失責任を適用する不法行為責任に対して、被害者が加害者の過失を証明できる場合、本法第三条で規定された過失責任によって、不法行為責任を確定すべきである。
第六条 【自己責任】
如何なる人は自分の不法行為によって、惹起された損害に対して、不法行為責任を負わなければならあい。
第七条 【代替責任】
法律の明文規定に従い、他人の不法行為に責任を負うべき者は、不法行為責任を負わなければならない。
無責任能力者又は制限責任能力者が実施した行為によって、他人の私法権益に損害を与えた場合、その親権者又は看護者が前項で規定された不法行為責任を負わなければならない。
第三章 損害
第八条 【損害の概念】
損害とは、法律上保護される他人の私法権益を侵害し、財産又は非財産的利益に不利な影響を与えることである。
私法権益は不利益が生じる恐れのある現実的な危険状態に陥れることも、損害とみなす。
第九条 【損害の類型】
下記の状況は、本法前項で規定された損害に属する。
(一)人身損害とは、生命権、健康権、身体権が侵害されたことによって、被害者が被った死亡、身体傷害及び財産上又は非財産上の不利益のことである。
(二)財産損害とは、物権、債権、知的所有権及びその他の財産的法益が侵害されることによって、被害者が被った財産上の不利益のことである。それが財産上の現実的減損と逸失利益の喪失を含む。
(三)精神損害とは、人格権、身分権などの私法権益が侵害されることによって、被害者が被った精神的、肉体的苦痛及びその他の人格上、身分上の不利益のことである。人格権的な要素が含まれる特定の物品が侵害された場合、惹起された人格利益の損害は精神損害と見なされる。
第十条 【損害された私法権益の順位と衝突】
本法は私法権益の異なる性質に応じて、下記の順序で異なる程度の保護を与える。
(一)人の生命、健康、身体、自由、尊厳と人格の完全性;
(二)その他の人格権、身分権及びその他の人格権益、身分権益;
(三)物権、債権、知的所有権及びその他の財産利益;
異なる保護程度の私法権益の間で衝突が発生したとき、優先順位の私法権益の方が優先的に保護されるべきである。
第十一条 【損害の減少、予防のために支出された合理的な費用の損失】
不法行為が発生された後、被害者が損害の予防又は減少のために支出した合理的な費用は、損害の内容と見なされ、賠償されるべきである。
損害結果を救済するために支出した弁護士報酬、調査費等の費用は、前項で規定された損害とみなされる。
第十二条 【損害の証明】
被害者は損害の存在及びその範囲と程度に対して、立証責任を負わなければならない。法律には損害への証明について特別の規定がある場合を除く。
損害金額への証明が困難し過ぎる又は費用が過大した場合、裁判所は経験法則と公平原則によってその金額を確定できる。
第四章 因果関係
第十三条 【因果関係の定義】
加害行為がなければ損害もない場合、その行為は損害の事実上の原因である。
一般状況において、その加害行為が損害を惹起できる場合、行為と損害の間の法的因果関係を認めることができる。
法的規範の目的及び加害者の行為価値と被害者の私法権益保障の衡平に基づき、法的因果関係の判断基準を適当に調整することができる。
第十四条 【因果関係の類型】
加害行為と私法権益の損害の間に因果関係があれば、不法行為責任を成立させる因果関係である。
加害行為と私法権益の損害の具体的範囲の間にある因果関係は、不法行為責任を負う因果関係である。
第十五条 【因果関係の挙証責任と標準】
被害者は不法行為責任成立の因果関係と不法行為責任負担の因果関係への立証責任を負わなければならない。
被害者が前項で規定された因果関係を証明するため、高度蓋然性という基準に達するべきである。法律に特別の規定がある場合、その規定に従う。
第十六条 【因果関係の推定:挙証責任倒置及び挙証責任緩和】
法律上で因果関係の推定を規定した場合、被害者は因果関係の証明に挙証責任を負わない、加害行為と損害事実の特定関係に基づき、二者の因果関係を推定する。ただし、加害者がその推定を覆せた場合を除く。
一般的な経験則に従い、被害者が加害行為と損害の間に高度の蓋然性のある因果関係を十分な証拠で証明できないが、既に蓋然性の標準に達した場合、その挙証責任を完成し、加害者より因果関係がないことを証明すべきである。加害者がその証明を覆した場合、因果関係は認められない。
第五章 故意及び過失
第十七条 【故意及び過失の類型】
本法における「过錯」は、故意と過失を含む。
第十八条 【故意】
故意とは、加害者が自分の行為によって、他人の私法権益への損害を知っているが、その損害の発生を意欲し、又は結果の発生が予見できるが放任した心理状態のことである。
第十九条 【故意の証明】
故意への立証は、加害者が損害を知っていることを証明すべきである。被害者の立証に基づき、加害者の行為を実施した時の状況、行為方法及び加害者の知識経験、侵害された権益などの要素に結び、加害者が損害の発生を知っているかどうかを判断すべきである。
加害者が損害の発生を明らかに知っているのに、引き続きその損害を惹起する恐れのある行為をする場合、損害の発生を期待し又は放任したと判断できる。
第二十条 【過失】
過失とは、加害者が損害の発生に故意ではないが、注意すべきしかも注意できるのに、注意しなかった心理状態のことである。
一般的に言えば、加害者が不法行為をした時の具体的な境地で注意義務を違反した場合、前項で規定された過失と見なされる。
第二十一条 【過失の程度】
過失が下記の状況によって、異なる程度に分ける。
(一)重大過失とは、行為者が社会の一般人の注意義務に違反することである。
(二)客観軽過失とは、行為者が善良管理人の注意義務に違反することである。
(三)主観軽過失とは、行為者が自己の事務処理と同一の注意義務に違反することである。
(四)一般過失とは、行為者が自分のあるべき注意義務に違反したが、情状が比較的軽いことである。
第二十二条 【過失の証明】
被害者の過失証明は、行為者が当該行為をしたとき、負うべき注意義務を証明することがそのポイントである。注意義務があるが、履行しない者
行為者の年齢、精神又は身体傷害などの要素によって、注意義務者の行為基準を適当に調整すべきである。
弁護士、会計士、建築士又は医者などの専門家責任者の過失を判断するとき、当該業界の一般基準に当たる専門家の注意義務を基準とする。
法律で過失推定と規定した時、加害者がすでに過失無きと証明できることは、自分が既に注意義務を尽くしたと証明できることである。
第二十三条 【過失や故意の程度及び意義】
過失がある場合、加害者の行為でもたらした損害に対して、不法行為責任を負うべきである。法律で別に規定された場合、加害者がただその故意や重大過失に対して、不法行為責任を負わなければならない。
故意、重大過失、客観的軽過失、主観的軽過失及び一般過失とは、過失相殺及び連帯責任、割合的責任の責任分担を確定する時、過失程度の軽重によって責任分担の割当を確定すべきのである。
第六章 抗弁事由と消滅時効
第一節 抗弁事由
第二十四条 【抗弁事由の定義及び証明】
抗弁事由は不法行為責任の成立を阻止し、又は不法行為責任を軽減する法定事由である。
加害者又は代替責任者は、その不法行為責任の免除又は軽減の法定事由の成立、及びそれによる不法行為責任の減免に対して、立証責任を負わなければならない。
第二十五条 【法によって職務執行】
公職人員は法律に基づき職権を行使し、他人に損害を与えた場合、不法行為責任を負わないが、法律に特別の規定がある場合を除く。
第二十六条 【正当防衛】
進行中の不法行為に対して、正当防衛により、損害を惹起した場合、防衛者は不法行為責任を負わない。
防衛が必要な限度を超え、あるべきでない損害を惹起した場合、防衛者は防衛過剰による損害に対して、適当な賠償責任を負わなければならない。
第二十七条 【緊急避難】
現実で発生した急迫の危険を避けるため、緊急避難を行い、他人に損害を与えた場合、避難者は不法行為責任を負わないが、その危険の発生を惹起した者は責任を負わなければならない。
緊急避難によって不適切な措置をとり、又は必要な限度を超えて、必要でない損害を惹起した場合、避難者が適当に不法行為責任を負わなければならない。
危険が自然原因によって生じた場合、緊急避難の受益者がその受益範囲内において適度に損失を分担すべきである。
第二十八条 【自助行為】
自分の合法的な権益を保護するため、緊急の場合、しかも公権力の救済が間に合わない場合、行為者の財産に対して必要な保全措置をとり、又は人身の自由に対して適当に制限することができる。これによって相手に損害を与えた場合、自助行為者が不法行為責任を負わない。
自助行為が必要な限度を超えて、あるべきでない損害を惹起した場合、自助行為者が適当に賠償責任を負うべきである。
第二十九条 【被害者承諾】
加害者の不法行為が承諾能力のある被害者の承諾を得た場合、それによる損害に対して、加害者は不法行為責任を負わないが、その承諾は法律の強制的な規定や善良の風俗に背いた場合を除く。
人身傷害への事前的な承諾は、加害者の不法行為責任の引受に影響しないが、法律に特別の規定がある場合を除く。
第三十条 【不可抗力】
不可抗力で損害を惹起した場合、行為者は不法行為責任を負わないが、法律に特別の規定がある場合を除く。
不可抗力と加害者の行為が競合し、損害を惹起した場合、加害者はその行為の過失又は原因力に基づき、賠償責任を負わなければならない。
第三十一条 【第三者原因】
第三者による損害が生じた場合、第三者は不法行為責任を負うべきであり、実際の加害者は責任を負わない。法律に特別の規定がある場合、その規定に従う。
第三十二条 【被害者原因】
損害が完全に被害者の故意や過失によって生じた場合、加害者は責任を負わない。
第三十三条 【危険の引受】
被害者が行為や活動にある予見できる危険性を承知したうえで、自ら参加し、それによる損害を受けたが、明示又は黙示で危険結果を引き受けた場合、法律の規定に違反しなければ、加害者は不法行為責任を負わない。
第二節 消滅時効
第三十四条 【一般消滅時効】
不法行為責任の消滅時効期間は三年とする。
第三十五条 【特別消滅時効】
製品責任や環境汚染責任の消滅時効期間は四年とする。
第三十六条 【消滅時効期間の計算と最長時効時間】
消滅時効期間は権利が侵害されたことが知る又は知るべきである時から計算する。ただ、権利が侵害された日から二十年間を超えた場合、保護しない。特別な状況があれば、裁判所より消滅時効を延長することができる。
第七章 損害救済方式と責任保険
第一節 損害の一般救済方式
第三十七条 【損害賠償】
被害者は賠償責任者に金銭払いで損害された私法権益を不法行為発生以前の状態に復帰させることが要求できる。
第三十八条 【代替性救済方式】
損害賠償が不適切又は不必要な場合、下記の方法で損害を救済することができる。
(一)原状回復;
(二)妨害排除;
(三)財産返還;
(四)危険消滅;
第三十九条 【不法行為の禁令】
権利者は他人の実施している又は間もなく実施する、私法権益を侵害する行為が証明できる証拠があり、直ちに阻止しないと私法権益を損なう場合、裁判所に禁令の発布を申請することができる。禁令で停止された関係行為が財産利益の内容に関わる場合、申請者は相当する担保を提供しなければならない。
申請に基づき、裁判所が対象者に禁令を発布し、関係行為の停止を命じることができる。
">禁令を発布したら、直ちに実行すべきである。
第四十条 【不法行為の救済方法の適用】
不法行為の救済方法は単独で適用することも合わせて適用することもできる。
被害者が法律上または事実上の可能な範囲内において、不法行為の救済方法を選ぶことができるが、賠償義務者の負担を増加したり、誠実信用の原則に背いたりしてはいけない。
第二節 損害賠償の一般的規定
第四十一条 【賠償権利者の範囲】
賠償権利者は財産的又は非財産的権益が直接に侵害された被害者を含む。その他、下記の人も含む。
(一)自然人が不法行為で死んだ場合、その配偶者、父母、子女が賠償権利者となる。配偶者、父母と子女がなければ、その四親等以内の近親族が賠償権利者となる。
(二)自然人が不法行為で死んだ場合、その生前、法律などに基づき、扶養義務のある被扶養者が賠償権利者となる。
(三)胎児が人身傷害を受けた場合、生まれた後賠償権利者となる。
(四)死者の人格利益が侵害された場合、死者の配偶者、父母及び子女が賠償権利者となる。配偶者、父母、子女がなければ、その四親等以内の近親族が賠償権利者となる。
(五)被害者が死亡した場合、被害者のために支出された医療費、葬儀費用などの合理的な費用を支払った人は、不法行為者に対して、当該費用の賠償を請求する時、賠償権利者になることができる。
第四十二条 【実際損失と逸失利益】
損害賠償の範囲は、被害者の不法行為による実際損失と不法行為で失われれた逸失利益を含む。
第四十三条 【全部賠償】
損害賠償を確定するとき、不法行為による実際の損失に基づき、全部賠償すべきであるが、法律には特別な規定がある場合を除く。
第四十四条 【最低生活標準の維持と損害賠償の縮減】
自然人の損害賠償責任を確定する時、最低限度の生活を維持し、法定扶養義務の履行、また育てられた未成年者の教育費用を保障するため、必要な費用を保留すべきである。全部賠償であれば耐えられない負担になれる恐れがある場合、その請求に従い、賠償金額を適当に減少することができる。具体的な金額を確定する時、不法行為者の主観的な悪意又は過失の程度、侵害された権益の性質、損失の大きさ及び被害者への影響等の要素を考慮すべきである。
第四十五条 【定期金賠償と一時金賠償】
将来発生する損害賠償について、当事者が協議を経て、定期金賠償か一時金賠償かを選ぶことができる。
協議を経て、定期金で賠償する場合、加害者が相当の財産担保を提供しなければならない。
協議を経て、一時金で賠償する場合、加害者が一括払いで賠償責任を負わなければならないが、将来の損害賠償の逸失利益を控除すべきである。
当事者が本条第一項で規定された方法で協議に達せない場合、裁判所は実際の情況によって賠償方法を決定することができるが、定期金賠償を優先的に適用すべきである。
第四十六条 【損益相殺】
不法行為による損害を被った反面、被害者が新たな利益をも得た場合、損害賠償額から得られた新たな利益を控除すべきであるが、その控除と受益の目的が一致しない場合を除く。
第三節 人身損害賠償
第四十七条 【人身損害の定義】
他人の生命権、健康権、身体権を侵害し、被害者の人身傷害又は死亡を惹起した場合、人身損害賠償責任を負わなければならない。
他人の身体権を侵害し、その身体の完全性を損害した場合、実際の損失が計算できないとき、名義上の損害賠償を負担すべきである。
第四十八条 【人身損害の賠償範囲】
他人の人身を侵害し、損害を惹起した場合、治療費、看護料、入院時の食事補助費、栄養費、宿泊料等の治療とリハビリのために支出した合理的な費用、及び休業で減少された収入などの損失を賠償しなければならない。
人の身体障害を惹起した場合、被害者の生活補助器具費を賠償しなければならない。リハビリ看護、継続治療のため、実際に発生した必要なリハビリ費、看護費、継続治療費など、生活上の需要で支出された必要な費用及び被害者が労働能力の喪失による収入の損失を賠償すべきである。
被害者が死亡した場合、葬儀費用や被扶養者の生活費、被害者死亡後に生まれた子女の生活費、また被害者親族が葬儀と埋葬で支出された交通費、宿泊料、休業損失などのその他の合理的な費用、及び死亡賠償金を賠償しなければならない。
死亡賠償金とは、被害者の平均年収が余命年数(不法行為発生時の国民の平均寿命と被害者年齢の差で計算する)をかけた上、損益相殺を行い、期限利益を差し引くのである。被害者が収入無し又は収入が明らかでない場合、前年度の国民の1人当たりの平均収入によって計算する。前述された余命年数が5年未満の時、5年で計算する。
第四十九条 【胎児健康損害への救済】
胎児の出生前に不法行為により損害を受けた場合、実際の損失によって人身損害の賠償責任を確定することができる。胎児が生まれた時死んだ場合、その母親より人身損害賠償を主張することができる。
ロングフルバース訴訟には、医療機関の過失がある場合、この被害者の実際の需要によって、損害賠償責任を確定しなければならない。
第五十条 【機会損失への救済】
加害行為で生存又は全治への機会を破壊し、減少した場合、喪失された機会損害について損害賠償を主張することができる。
前項で規定された機会損失賠償を主張する場合、被害者は加害行為と機会喪失の因果関係を証明しなければならない。
第四節 財産損害賠償の範囲
第五十一条 【財産損害賠償範囲】
他人の物権、債権、知的所有権などの財産的私法権益を侵害し、財産的利益損失を惹起した場合、その財産的権益が不法行為による価値喪失や減損を賠償すべきであり、当初の価値に回復させるために支出した費用を含む。
第五十二条 【財産損害の計算方法】
財産損害が損失の実際範囲によって計算する。市場価格で計算できれば、不法行為の発生時又は不法行為責任の確定時の市場価格によって計算する。市場価格がなけれが、又は市場価格で計算すれば明らかに不公平な場合、実際の情況によって賠償金額を確定する。
間接的損失を計算する時、逸失利益の客観的な情況によって計算すべきであり、財産損害の賠償金額の不適当の拡大や縮小を避けるべきである。
第五十三条 【予期損害賠償】
不法行為者が故意ではなく、他人に財産的損害を与えた場合、その実際損失が予見可能な範囲を超えた時、損害賠償責任を適当に軽減することができる。
第五節 精神損害賠償
第五十四条 【精神損害賠償範囲】
他人の人身的な私法権益を侵害し、精神的な損害を与えた場合、被害者が精神損害の賠償を請求できる。
不法行為によって被害者の死亡又は厳重な人身傷害を惹起し、その配偶者、父母、子女に厳重な精神的損害を惹起した場合、配偶者、両親、子女は精神損害賠償を要請することができる。
第五十五条 【その他の人身権益への損害救済:公開権】
氏名権、肖像権、プライバシー権などの人身的な私法権益を侵害し、財産上の利益を損害した場合、被害者の被った実際の損害又は不法行為者の得た利益によって計算する。両者とも確定し難く、しかも被害者と加害者が賠償金額について協議に達せない場合、裁判所は実際の情況によって賠償金額を確定することができる。
第五十六条 【人格要素を含む物を侵害した精神損害賠償】
象徴的な意義をもつ特定の紀念物品などの人格要素を含む物を侵害し、物権者の厳重な精神的損害を惹起した場合、精神的損害賠償を要請することができる。
第五十七条 【精神的なショックへの損害賠償】
加害行為の危険境地に陥り、その配偶者、子女、父母の人身傷害に被った残酷な場面を目撃し、厳重な精神損害を受けた場合、精神損害賠償を要請することができる。
共に生活している祖父母、外祖父母、孫、孫娘、外孫、外孫娘又は兄弟姉妹の人身傷害を被った残酷な場面を目撃し、重大な精神損害を受けた場合、前項の規定に適用する。
第五十八条 【精神损害の赔偿金額の確定】
精神損害の賠償金額について、下記の要素に基づき確定する。
(一)被害者又はその配偶者、子女、父母が被った精神的な苦痛、肉体的な苦痛の程度;
(二)被害者の収入水準及び生活状況;
(三)加害者の過失の程度;
(四)不法行為の手段、状況、方法などの具体的な情状;
(五)不法行為が惹起した結果;
(六)加害者が責任を引き受ける経済的能力;
(七)訴訟を受理した裁判所所在地の平均的な生活水準。
第六節 責任保険
第五十九条 【責任保険の代替性】
一部又は全部の損害が法定又は商業責任保険の範囲に属した場合、被害者は保険者に保険責任を主張することもできるし、賠償責任者に不法行為責任を主張することもできる。法律には特別の規定がある場合、その規定に従う。
第六十条 【責任保険不足の賠償責任】
被害者が保険者に保険責任を主張した後、全部の損害賠償が得られない場合、引き続き賠償責任者に不法行為責任を主張することができる。
第八章 複数加害者の不法行為と責任
第一節 共同不法行為
第六十一条 【主観的共同不法行為】
二人以上が故意で共同不法行為を実施し、他人の私法権益を侵害し、損害を与えた場合、連帯責任を負わなければなれない。
第六十二条 【教唆・幇助による不法行為と混合責任】
他人を教唆し、幇助し、不法行為を行った者は、行為者とみなされ、連帯して責任を負わなければならない。
民事行為無能力者を教唆、幇助し、不法行為を行わせた者は、民事責任を負わなければならない。
民事行為無能力者又は制限民事行為能力者を教唆、幇助し、不法行為を行わせた者は、連帯責任を負わなければならない。民事行為無能力者又は制限民事行為能力者の親権人や監護人が監護責任を果たさない場合、その過失に相当する責任を負わなければならない。
第六十三条 【グループメンバー】
一部のグループメンバーの加害行為によって、他人に損害を与えた場合、他のメンバーが皆損害に連帯責任を負わなければならないが、その加害行為が集団活動と無関係であることが証明できる場合を除く。
第六十四条 【客観的共同不法行為】
二人以上が共同の故意は存在しないが、その行為が結合し同一の損害結果を生じ、共同の因果関係があり、しかも、その損害結果が分割できない場合、連帯責任を負わなければならない。
第六十五条 【共同危険行為】
二人以上が他人の人身、財産の安全に危害を加える行為を行い合わせ、その一人又は複数人の行為が他人に損害結果を与えたが、実際の加害者が確定できない場合、連帯責任を負わなければならない。
損害結果が自分の行為によるものではないを証明できるだけでは、前項で規定された賠償責任を免除することはできない。
第六十六条 【原因累積】
二人以上が実施した不法行為が同一の損害をもたらし、それぞれの行為者の行為が全損害をもたらすに十分な行為である場合、行為者は連帯責任を負わなければならない。
二人以上が実施した不法行為が同一の損害をもたらし、一部の行為者の行為が全損害をもたらすに十分な行為であり、もう一部の行為者の行為が一部の損害をもたらした場合、共同でもたらした損害の部分に対して、行為者は連帯責任を負わなければならない。
第二節 割合的責任と連帯責任
第六十七条 【連帯責任及びその分担と再分担】
法律において連帯責任を負うことが規定されている場合、被害者が連帯責任者の中の一人、複数人又は全員に賠償責任を請求する権利があるが、合わせて損害賠償責任の総額を超えてはいけない。
自らが負担すべき賠償金額を超える金額を支払った連帯責任者は、その超えた部分に対して、他の責任を負わなかった連帯責任者に返還を求める権利を有する。
部分的連帯責任者が一部又は全部の最終責任割当に負担できない場合、その負担できない部分に対して、その他の連帯責任者により、それぞれの最終的な責任割合に基づき再分担する。
第六十八条 【最終的な責任割合の確定】
最終責任者の最終的な責任割合は、下記の要素によって確定する。
(一)過失の程度;
(二)原因力の大きさ;
(三)客観的な危険程度;
(四)その他の法定事由。
前項で規定された方法によって、最終責任割合を確定できない場合、賠償責任を均等に分けるべきである。
第六十九条 【求償請求権】
求償とは、自分の最終的な責任の割当を超えた責任を分担した者が、その他の責任者に相応する最終責任を求める請求権である。
第七十条 【連帯責任における混合責任】
法律の規定により、連帯責任において、一部の責任者は連帯責任を引き受けるべきであり、もう一部の責任者は割合的責任を引受けるべきである場合、連帯責任を引き受ける人は全部の責任に対して責任を負うべきである。割合的責任を引き受けた人はただ割合的責任の割合に応じて、賠償責任を負わなければならない。被害者が提出したその責任の割合を超えた賠償請求に対して拒否することができる。
連帯責任を引き受けた責任者は、自分の最終的責任の割合を超えた部分に対して、その他の責任者又は割合的責任者に分担させることを要請する権利がある。
第三節 その他の複数加害者の不法行為及び責任
第七十一条 【不真正連帯責任及び追償】
同じ損害事実に基づき、二つ以上の賠償請求権を生じ、複数請求権の救済目的が同じであるが、最後責任者が一人しかいない場合、法律には請求権の行使順序に特別な規定がなければ、被害者がその中の一つか幾つかを選んで、請求権を行使し、賠償責任を請求することができる。被害者が全額賠償を得た後、全部請求権が消滅する。
被害者に責任の引き受けを求めた責任者は最終的責任者でなければ、中間責任を引き受けた者は賠償責任を果たした後、最終責任者に求償する権利がある。
第七十二条 【非最終責任者の賠償責任及び求償】
同じ損害事実に基づき、二つ以上の賠償請求権が生じた場合、複数の請求権の救済目的が同じであるが、一人の責任者だけが最終責任者となる。法律に規定された非最終責任者に賠償を請求できる場合、被害者が非最終責任者に賠償を請求することができる。非最終責任者が賠償した後、最終責任者への求償権を有する。
前項で規定された状況に相応しい、中間責任を負う非最終責任者が賠償能力を喪失した場合、被害者が最終2責任者に賠償責任を請求できる。
第七十三条 【補充責任及び求償】
同じ損害事実によって、二つ以上の損害賠償請求権が生じ、複数請求権の救済目的が同じであり、法律に補充責任と規定された場合、被害者はまず直接責任者に賠償を請求すべきである。直接責任者は賠償できない又は不十分な場合、被害者は補充責任者に損害賠償を請求することができる。補充責任者が責任を果たした後、直接責任者に求償することができる。
前項で規定された補充責任は、補充責任者と最後責任者の間に責任を分担し、自分の責任の割合を超えた責任者が他の責任者に求償することができる。
第七十四条 【割合的責任】
二人以上が別々に実施した不法行為が同一の損害を惹起し、損害結果が区分できる場合、法律にはその他の責任分担形式が規定されない場合、割合的賠償責任を負担すべきである。
割合的責任者は自ら負担すべき責任の割合を超えた賠償請求を拒否することができる。
第九章 製品責任
第七十五条 【本法における製品責任の規範目的】
東アジア地域の製品取引が日々に発展し、欠陥製品の危険や潜在危険が日々に増加した状況において、各法域における消費者の私法権益を確保するため、欠陥製品責任の構成及び分担を明確するため、本章では統一的な製品責任の規範を制定する。
第七十六条 【製品の定義】
本法が称する「製品」とは、 加工、 製作を経て、 販売を目的とする動産のことである。
製品には建築工事が含まれないが、建築工事に用いる建築材料、部品と設備などは、前項で規定された製品の範囲に属し、製品と称される。
販売を目的とする下記の物が、本法で製品と称する。
(一)導線で運送された電気エネルギー及びパイプで運送された石油製品、ガス、熱エネルギー又は水;
(二)コンピュータのソフトウェア及び類似の電子製品;
(三)販売された微生物製品、動植物製品、遺伝子プロジェクト製品又は人類の血液製品。
第七十七条 【製品欠陥の類型】
製品欠陥とは製品には人身、財産の安全に対する不合理的な危険があることである。下記の状況は製品欠陥と称される。
(一)製造欠陥とは、製品がその設計意図に背き、不合理な危険があることである。
(二)設計欠陥とは、合理的な代替設計によって損害を軽減又は免除することができるが、そうではなく、製品の合理的な安全性がなくなり、不合理的な危険があることである。
(三)警告説明欠陥とは、製品に合理的な危険があり、十分な説明や警告を通じて損害が免除できるが、そうではなく、製品が含まれた合理的な危険が不合理的な危険に転化させることである。
第七十八条 【製品欠陥の推定】
製品による損害は、一般的に製品欠陥に引き起こされたタイプに属し、具体的な事件における損害は、製品の販売や発送時に存在した欠陥以外の原因によって引き起こされたのではなく、交付時に存在する欠陥と推定される。
第七十九条 【生産者と販売者の中間責任の無過失責任及び求償】
製品欠陥による他人への人身損害や欠陥製品以外の財産損失をもたらした場合、被害者は欠陥製品の生産者や販売者に不法行為責任を請求することができる。
販売者が賠償責任を負った後、生産者に対して求償権を有するが、生産者はその欠陥が販売者の過失によって引き起こされたと証明できる場合を除く。
製品欠陥は販売者の過失によって生じた場合、生産者が賠償責任を負った後、販売者に求償することができる。
第八十条 【生産者の無過失最終的責任】
生産者の原因で製品に欠陥がある場合、生産者は不法行為責任を負わなければならない。販売者に求償してはいけない。
第八十一条 【製品責任の免責事項】
生産者は下記の事項を証明できる時、賠償責任を負わない。
(一)製品をまだ流通に投入していない場合。
(二)製品を流通に投入した時、損害を引き起こした欠陥がまだ存在しなかった場合。
(三)製品を流通に投入した時の科学技術水準では、欠陥の存在に気付き得なかった場合。
第八十二条 【販売後の警告及び製品のリコール】
製品を流通させる前、欠陥が発見されなく、流通させた後、生産者が製品に合理的な危険があると発見した場合、合理的かつ効果的な方法で購入者に警告し、損害防止の正確的な使用方法を説明しなければならない。販売後の警告義務を合理的に履行しないことによって、損害を惹起した場合、不法行為責任を負わなければならない。
製品を流通させた後、生産者は欠陥によって人に損害を与えたことを発見した場合、すぐ合理的かつ効果的な措置をとり、欠陥製品をリコールしなければならない。製品のリコール義務を合理的に履行しないことによって、人に損害を及ぼした場合、不法行為責任を負わなければならない。
販売者は生産者に協力し、本条の第一項と第二項で規定された義務を履行しなければならない。
第八十三条 【運送人及び倉庫業者の責任】
運送人又は倉庫業者により、製品の欠陥が生じた場合、生産者又は販売者が賠償責任を負わなければならない。生産者又は販売者が賠償責任を負った後、運送人、倉庫業者に対して賠償を求める権利がある。
生産者、販売者が賠償責任を負うことができない場合、被害者は直接的に運送人、倉庫業者に損害賠償責任を請求することができる。
第八十四条 【製品品質担保者の責任】
製品品質の検査機構、認証機構が出した検査結果又は証明は不実であり、損失を与えた場合、製品の生産者、販売者と連帯責任を負わなければならない。
製品品質に承諾、保証を出したが、当該商品がその承諾、保証された品質基準に不適合し、損失を惹起した場合、承諾者、保証人は製品の生産者、販売者と連帯責任を負わなければならない。
第八十五条 【虚偽広告責任】
生産者、販売者が虚偽の広告又はその他の虚偽の宣伝を行い、提供された製品が損害を惹起した場合、本法の規定に基づき製品責任を負う。
広告経営者、発布者は、広告又はその他の宣伝が虚偽なことを知っている又は知るべきであるが、依然として設計、制作、発布した場合、欠陥製品による損害に対して、欠陥製品の生産者、販売者と連帯責任を負う。
虚偽の広告又はその他の虚偽の宣伝を通じて製品を推薦したとき、推薦者はその欠陥製品による損害に対して、本条第二項で規定された責任者と連帯責任を負う。
第八十六条 【伝統なトレードプラットフォームプロバイター責任】
集中取引市場の創立者、カウンターの賃貸者、展示即売会の主催者などのトレードプラットフォームプロバイターが必要な管理義務を尽くしなければ、欠陥製品による損害に対して、被害者は製品の生産者、販売者にも、過失のあるトレードプラットフォームプロバイターにも賠償責任を主張することができる。しかし、プラットフォームプロバイターが事前に先行賠償金の支払いを承諾した場合、その承諾に従って責任を負う。トレードプラットフォームプロバイターが賠償責任を引き受けた後、製品の生産者又は販売者に対して求償権がある。
トレードプラットフォームプロバイターが販売者又は生産者がそのプラットフォームを利用し、消費者の私法権益を侵害することが知っている時、販売者又は生産者と連帯責任を負う。
第八十七条 【ネットトレードプラットフォームプロバイター責任】
インターネットトレードプラットフォームプロバイターで購入した欠陥製品が損害を惹起した場合、被害した消費者は販売者又は生産者に賠償を請求することができる。ネットワークプラットフォームプロバイターが販売者又は生産者の本当の名称、住所及び有効な連絡方法を提供することができない場合、被害を受けた消費者はネットワークトレードプラットフォームプロバイターに賠償を要請することができる。ネットワークトレードプラットフォームプロバイターが先に賠償金を支払った場合、その承諾に基づき責任を負う。ネットワークトレードプラットフォームプロバイターが賠償した後、販売者又は生産者に求償することができる。
ネットワークトレードプラットフォーム提供者は販売者又は生産者がそのフォームを利用し、消費者の私法権益を侵害することが知っているのに、必要な措置をとらない場合、この販売者又は生産者と連帯責任を負う。
第八十八条 【原材料、補助材料及び零部件供給者責任】
欠陥のある原材料、補助材料が供給され、当該材料で人に損害を与えた製品を製造した場合、生産者は不法行為責任を負う。生産者は賠償責任を履行した後、欠陥のある原材料、補助材料の供給者に対して求償権がある。被害者は欠陥のある原材料、補助材料の供給者に対して、直接的に賠償を請求することができる。
欠陥のある零部件を供給した零部件の供給者に対して、前項の規定が適用する。
第八十九条 【中古商品、再生商品の責任】
中古商品の販売者は生産者とみなされる。商品の品質保証期限内にある場場合は、元の製造者より品質保証責任を負う。
再生商品の元の生産者が製品責任を負わないが、損害が原製品の固有欠陥によって生じた場合を除く。
第九十条 【食品による侵害に関する特別規定】
食品の生産者、販売者の生産、販売した食品が品質基準に合っている場合でも、消費者の生命、健康に厳重な損害を与えたときは、本法第78条の規定に基づき、その製品に欠陥があると推定される。生産者は製品の欠陥が別の原因によるもの、又は販売者が自己の販売した食品の欠陥に対して過失がないと証明できる場合を除く。
初級農産品の販売者は製品責任を負わなければならない。
第九十一条 【薬品、血液による侵害に関する特別規定】
薬品の生産者、販売者が薬品に欠陥のないことに対して立証責任を負う。欠陥の存在が証明できない場合、欠陥のある薬品による損害に対して、賠償責任を負う。
血液提供機構が血液の関係基準に合うことに対して立証責任を負う。証明できない場合、賠償責任を負わなければならない。行為時の科学技術に基づき、血液によって損害を発生する恐れがあることが発見できない場合、惹起された損害に対して、適当に補償責任を負わなければならない。
第九十二条 【タバコ等の健康に関する警告の不可免責性】
タバコ、強い酒等の製品の生産者、販売者は、ただタバコ、強い酒が健康に害する警告を出しただけでは、既に警告説明の義務をはたしたとはみなされない。
第九十三条 【生命健康権を損害した実際損失を超えた賠償】
生産者、販売者の故意又は重大過失によって、製品の欠陥を生じた場合、又は生産、販売された製品には欠陥があり、他人の生命健康権を損害する可能性があると知っているのに、依然として生産又は販売し、他人に損害をもたらした場合、被害者が生産者、販売者に実際の損失を賠償した上、実際の損失を超えた賠償金を別に支払うことが請求できる。
実際損失を超えた賠償は、責任者の悪意程度及び損害結果によって、必要な限度で確定すべきである。
第九十四条 【製品責任の最長保護期限】
製品の欠陥による損害賠償請求権は、当該製品を最初の消費者に引き渡した日から15年を経過した時消滅する。ただし、明示された安全使用期限を超えない場合、その限りではない。
第九十五条 【多法域にわたる製品責任訴訟の管轄及び法律適用】
多法域にわたる製品責任訴訟は、不法行為の実施地又は不法行為の結果発生地の法域における裁判所が管轄する。
製品責任は被害者の常居所地の法律を適用する。被害者が加害者の主要営業地又は損害発生地の法律を選んで適用することができる。又は加害者が被害者の常居所地で関係経営活動を従事しない場合、加害者の主要営業地又は損害発生地の法律を適用する。
多法域にわたる製品責任の紛争事件は当事者の損害を発生した後、協議によって、本法第75条から第95条の規定を選んで、製品責任を確定する。
第十章 環境汚染責任
第九十六条 【本法で規範される環境汚染責任の目的】
東アジアの各法域にわたる環境安全、健康と生態バランスを保護し、環境汚染を減らし、環境の改善を促進し、環境汚染で損害を受けた被害者を救済するため、本章を制定し、環境汚染責任の分担規範を統一する。
第九十七条 【環境汚染の無過失責任】
環境汚染によって損害を惹起した場合、汚染者は不法行為責任を負わなければならない。
第九十八条 【環境汚染の因果関係推定】
環境汚染による紛争について、被害者が初歩的に汚染行為と損害の間で因果関係がある可能性が証明できる場合、汚染者がその汚染行為と被害者の損害の間に因果関係がないことに対して立証責任を負う。汚染者が証明できない又は立証不足の場合、因果関係の成立が認められる。
第九十九条 【合理的排出という抗弁事由の排除】
排出基準に合う汚染物質を排出したが、環境汚染の損害を惹起した場合、行為者は不法行為責任を負わなければならない。
第一百条 【複数加害者の汚染排出による損害への賠償責任】
二人以上の行為者が環境を汚染した場合、汚染者の賠償責任は汚染物の種類、排出量などの要素に基づき確定すべきである。それぞれの責任割合が確定できない場合、均等に分担すべきである。
第一百〇一条 【現実的な人身損害がない時の環境汚染責任の分担】
いかなる人や組織が高度汚染危険性のある施設を持ち、又は行為自身や利用方法の性質に基づき汚染危険性のある行為に携わるとき、関係法律規定に遵守したとしても、環境に著しい損害を与えたとき、過失の有無を問わずに、環境主管部門は環境被害の程度に基づき、汚染者に賠償責任を請求し、その賠償金を環境汚染の治理ファンドに納入すべきである。
第一百〇二条 【第三者原因】
第三者の過失により環境汚染の損害を惹起した場合、被害者は汚染者や第三者に対して、賠償を請求することができる。ただし、汚染者は賠償責任を果たした後、第三者に対して求償権がある。
第一百〇三条 【不可抗力】
行為者は不可抗力による環境汚染の損害に対して、賠償責任を負わない。ただし、法律に別の規定がある場合、この限りではない。
第一百〇四条 【起因消除及び原状回復】
環境汚染の損害を惹起した汚染者は、相応する損害賠償金額を負担するだけではなく、汚染の起因や危害を排除し、環境を原状又は原状に相当する様子に回復すべきであり、あるいは起因除去及び原状回復のために支払った費用を負担すべきである。
第一百〇五条 【悪意による環境汚染損害が実際損失を超えた時の賠償】
故意や重大過失で環境を汚染し、又は、環境汚染の実質的な可能性のある行為を従事し続け、環境汚染を惹起した場合、被害者は行為者に対して、実際損失を賠償する以外、その実際損失を超えた賠償責任を適当に請求することができる。
第一百〇六条 【環境汚染の消滅時効】
環境汚染損害による環境不法行為の損害賠償請求権に対して、本法第35条の規定を適用する。賠償責任を負うべき汚染者の間にある求償権は、その環境不法行為の損害賠償責任を履行した日から三年を経過した時、時効によって消滅する。
第一百〇七条 【環境公益訴訟】
公共衛生、環境、生活品質などの社会公共利益を損害した行為に対して、如何なる人又は関係利益を持つ団体、政府および検察庁は、民事不法行為の訴訟を提起し、参加する権利を持つ。
第一百〇八条 【多法域にわたる環境汚染責任訴訟の地域管轄】
多法域にわたる環境汚染の責任紛糾に関して、汚染行為の実施地又は汚染損害結果の発生地の法域における裁判所が管轄する
多地域にわたる環境汚染責任紛糾事件に対して、不法行為地の法律を適用する。不法行為が発生した後、当事者の合意によって法律を選んで、当法第97条から第107条までの規定を含む。
第十一章 ネットサービスプロバイター不法行為責任
第一百〇九条 【本法で規範されたネットサービスプロバイター不法行為責任の目的】
東アジア各法域における情報一体化を促進し、ネット上の行動自由を保護し、ネットサービスを規範化し、異なる法域にあるネットユーザのネット不法行為損害を救済するため、本章を制定し、プロバイターの不法行為責任を規範させる。
第一百一十条 【プロバイター責任分担の一般規則】
ネットユーザー、プロバイターはインターネットを利用し、他人の私法権益を侵害し、損害を惹起した場合、不法行為責任を負わなければならない。
インターネットサービスプロバイターは、ネットプラットフォームサービス及びネット内容サービスの提供者を含む。
第一百一十一条 【「セーフハーバー」原則の適用】
ネットユーザがネットサービスを利用し、不法行為を実施し、他人の私法権益を損害した場合、権利者はプロバイターに削除、遮断、リンク断絶などの技術上可能な措置をとり、損害結果を消除することが要求できる。プロバイターが通知を受け取った後、合理的な期間中に必要な措置をとらなかった場合、損害の拡大された部分に対して、そのネットユーザと連帯責任を負うべきである。
第一百一十二条 【通知及びその要件と形式】
緊急事態を除き、書面で通知すべきである。書面形式とは、文書・手紙及び電子ファイルなどの有形的に内容を載せる形式である。
通知には、下記の内容を有するべきである。
(一)通知者の氏名(名称)、連絡先及び住所;
(二)措置の採取が要求された不法行為内容のネットアドレス、又は正確的に不法行為内容を確定できる関係情報;
(三)不法行為に構成できる初歩的な証明材料;
(四)通知者が通知書の真実性に責任を負う承諾。
発送された通知が上述した内容がなければ、有効な通知を発送しなかったと見なされ、通知の效果が発生しない。
第一百一十三条 【合理期間の確定】
本法第111条で規定された合理期間を確定するとき、下記の要素を考慮すべきである。
(一)侵害された私法権益の重大性。
(二)必要な措置をとった技術可能性。
(三)必要な措置をとった緊迫性。
(四)権利者が要求された合理期間。
一般的には、合理期間が24時間とする。
第一百一十四条 【損害の拡大部分の起算時点】
損害の拡大部分は、プロバイターが通知を受け取った時から、必要な措置をとって、損害の影響を消滅する時までの私法権益の損害である。
第一百一十五条 【プロバイターの必要な措置をとった後の通知転送又は公告義務】
プロバイターは必要な措置をとった後、直ちに不法行為で訴えられたネットユーザーに通知を転送すべきである。転送できない場合は、通知の内容を同じネットで公告すべきである。
第一百一十六条 【反通知及びその要件と形式】
ネットユーザーは通知を受け取った後、又は公告を知った後、自ら提供した内容が他人の私法権益を侵害しなかったと判断した場合、プロバイターに書面的な反通知を出し、発表された内容を発表前の状態に回復させることが要求できる。
反通知には、下記の内容があるべきである。
(一)反通知者の氏名(名称)、連絡先及び住所;
(二)すでに内容、名称とネットアドレスに取った必要な措置への撤回を要求する;
(三)必要な措置がとられた行為は不法行為ではないと判断できる初歩的な証明材料;
(四)反通知者が反通知書の真実性に対して責任を負う承諾。
第一百一十七条 【プロバイターの反通知に対する責任】
プロバイターがネットユーザーからの書面の反通知を受け取った後、公表された内容を初期状態に回復し、同時にネットユーザの反通知を通知発送者に転送すべきである。ただし、公表された内容は明らかに権利を侵害したと判断した場合は、この限りではない。
第一百一十八条 【通知、反通知を抗議した場合の訴訟】
ネットプロバイターが反通知者の要求通りに、その発布した内容の初期状態に回復した後、通知者は再びプロバイターに削除、遮断、リンク断絶などの措置をとると通知してはいけない。ただし、裁判所に起訴することができる。
第一百一十九条 【錯誤通知の発送者の賠償責任】
通知発送者の発送した通知が不適当なので、プロバイターが必要な措置をとり、自ら又はネットユーザーに損害を与えた場合、通知発送者は賠償責任を負わなければならない。
第一百二十条 【「紅旗原則」の適用】
プロバイターはネットユーザーがネットワークを利用し、他人の私法権益を損害したことを知っているが、必要な措置をとらなかった場合、ネットユーザーと連帯責任を負う。
第一百二十一条 【「知る」の判断方法】
「知る」とは、プロバイターがネットユーザーの不法行為を実施したことを知っている、又はその知っていることが証明できることである。
第一百二十二条 【多法域にわたるプロバイター不法行為責任訴訟の地域管轄】
ネット不法行為事件は、不法行為地または被害者の住所地における裁判所が管轄する。不法行為地は、不法行為の実施に利用されるサーバー、コンピュータ端末などの設備の所在地、及び不法行為の結果発生地を含む。不法行為地、被害者の住所地が確定し難い場合、原告に発見された不法行為内容のあるコンピュータ端末などの設備の所在地を不法行為地とみなされる。
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